「児童福祉法等の一部を改正する法律」のうち意見表明等支援事業に関連する条文とコメント

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児童福祉法等の一部を改正する法律 第2条 

児童福祉法の改正

第6条の3第17項 

この法律で、意見表明等支援事業とは、第三十三条の三の三に規定する意見聴取等措置の対象となる児童の同条各号に規定する措置を行うことに係る意見又は意向及び第二十七条第一項第三号の措置その他の措置が採られている児童その他の者の当該措置における処遇に係る意見又は意向について、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握するとともに、これらの意見又は意向を勘案して児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整その他の必要な支援を行う事業をいう。

1 「児童の福祉に関し知識⼜は経験を有する者」

「児童の福祉に関し知識⼜は経験を有する者」では広すぎます。子どもの意見や意向、思いや願いを聴くには、子どもアドボケイトとしての心構えや知識、技術(傾聴・意思表出支援・意見形成支援・意見表明支援・代弁・意見実現支援等の専門的技術)を身に着け、経験やトレーニングを積むことが必要です。また子どもの要請にこたえて子どもの思いや願いを子どもと共に関係者に伝える方法も、身に着ける必要があります。
たとえ児童の福祉に関し知識⼜は経験がある者であっても、そのような専門的技術を有しない者には、子どもの思いや願いを的確に聴き、子どもとともにその思いを伝えることは困難です。
そこで改正法の「知識⼜は経験を有する者」は、「児童の意見表明等支援に関する専門的知識・技術を有する者」とするべきだと考えます。

2 「意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な⽅法により把握」

この規定は、子どもから直接聴かずに、観察や記録、検査、関係者の見解から安易に子どもの意見を推量することにつながるのではないかとの懸念があります。
意見や意向の聴取は、言葉を媒介にしなくても、行動、表情、声の調子など、様々な方法を通して行うことが可能です。
そこで、改正法の「意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な⽅法により把握」は「意見⼜は意向の形成及び表明の支援」と規定すべきです

3 「意見⼜は意向を勘案して」

子どもアドボケイトは、子どもの意見や意向、思いや願いをそのまま受け取り、それを関係者に伝えます。「勘案」することは、その思いや願いを受け取った側が行うことで、アドボケイトの仕事ではありません。子どもアドボカシーは子どもに導かれることがその職責です。
改正法の「勘案して」は削除されるべきです。

4 「児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整」

子どもアドボケイトは子どもから聴いた意見や意向を、そのまま、子どもとともにあるいは子どもに代わって関係者に伝え、その実現の手助けをします。子どもの表明する意見や意向は、児童相談所等の関係機関の⽅針や決定に対する異議の表明をも当然、含んでいます。それなのに関係機関に遠慮をし、斟酌して、関係機関の意向に合わせて「調整」をはかるようでは、およそアドボケイトの仕事とはいえません。
また「連絡」をアドボケイトの業務とすると、アドボケイトに関係機関との情報共有を求められかねず、子どもの秘密を守り、子どもの側にだけ立つ、というアドボケイトのあるべき活動を否定するおそれがあります。

改正法の「4 「児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整の支援」は「児童の権利主張の支援」とするべき。

5「その他の必要な支援」

アドボケイトの業務は子どもの思いや願いを聴いてそれを子どもとともに関係者・関係機関に伝え、実現を図ることに尽きる。改正法の「その他の必要な支援」では支援の内容が際限なく広がり、本事業が形骸化することが懸念される。

「その他の必要な支援」は削除する。

6 まとめ

(改正法)この法律で、意見表明等支援事業とは、第33条の3の3に規定する意見聴取等措置の対象となる児童の同条各号に規定する措置を行うことに係る意見又は意向及び第27条第1項第3号の措置その他の措置が採られている児童その他の者の当該措置における処遇に係る意見又は意向について、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握するとともに、これらの意見又は意向を勘案して児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整その他の必要な支援を行う事業をいう。
(修正の提案)この法律で、意⾒表明等⽀援事業とは、第33条の3の3に規定する意⾒聴取等措置の対象となる児童の同条各号に規定する措置を⾏うことに係る意⾒⼜は意向及び第27条第1項第3号の措置その他の措置が採られている児童の当該措置における処遇に係る意⾒⼜は意向の形成及び児童相談所、都道府県その他の関係機関への表明を、児童の意見表明支援に関する専門的知識・技術を有する者が、独立した第三者として支援する事業をいう。

第11条第1項第2号のリ

第11条第1項(「都道府県は、この法律の施行に関し、次に掲げる業務を行わなければならない。」)の第2号に次のように加える。

リ 児童養護施設その他の施設への入所の措置、一時保護の措置その他の措置の実施及びこれらの措置の実施中における処遇に対する児童の意見又は意向に関し、都道府県児童福祉審議会その他の機関の調査審議及び意見の具申が行われるようにすることその他の児童の権利の擁護に係る環境の整備を行うこと。

都道府県に、子どもの「意見又は意向」の尊重を通じて子どもの権利の擁護につなげる環境の整備を行うことが義務とされたことは大きな意義がある。

今後、各都道府県は、この規定によって義務付けられたとおり、子どもアドボカシーの制度の整備や、子どもの声を積極的に受け止める救済機関の構築に、着実に取り組む必要がある。

第33条の3の3 

都道府県知事又は児童相談所長は、次に掲げる場合においては、児童の最善の利益を考慮するとともに、児童の意見又は意向を勘案して措置を行うために、あらかじめ、年齢、発達の状況その他の当該児童の事情に応じ意見聴取その他の措置(以下この条において「意見聴取等措置」という。)をとらなければならない。ただし、児童の生命又は心身の安全を確保するため緊急を要する場合で、あらかじめ意見聴取等措置をとるいとまがないときは、次に規定する措置を行つた後速やかに意見聴取等措置をとらなければならない。
一 第二十六条第一項第二号の措置を採る場合又は当該措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合
第二十七条第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を採る場合又はこれらの措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合
三 第二十八条第二項ただし書の規定に基づき第二十七条第一項第三号の措置の期間を更新する場合
四 第三十三条第一項又は第二項の規定による一時保護を行う場合又はこれを解除する場合

子どもの意見や意向は、聴くだけではなく、可能な限り実現していく視点が大切です。
そこで聴取した児童の意見等については、その児童の年齢及び成熟度に従って正当に重視しなければならない旨も併せて規定すべきです(子どもの権利条約第12条)。なお、ここで「年齢及び成熟度に従って」とあることをもって、安易に、低年齢であるとか、未だ成熟途上にあるとかを理由に意見を重視しなくてよい、としてはなりません。

第33条の6の2 

都道府県は、児童の健全な育成及び措置解除者等の自立に資するため、その区域内において、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業及び意見表明等支援事業が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない。

子どもアドボケイトの目的は、他の事業とは異なり「児童の健全な育成及び措置解除者等の自立」ではなく子どもの意見表明権の保障で、その活動を通じて子どもの権利擁護の実現をめざします。
子どもアドボケイトは、子どもの権利実現のための重要な働きですので、都道府県等には子どもアドボケイトに関し「必要な措置の実施」の努力を義務付けるものにとどまらず、子どもが誰でもいつでも子どもアドボケイトを利用できるよう、端的に子どもアドボケイトの提供を義務づけるべきです。

そこで、改正法の第33条の6の2の規定から意見表明等支援事業を抜き出し、別途、1条を設け、次のような規定を設けるべきです。

都道府県は、児童の意見表明権の保障に資するため、その区域内において、児童が自由に自己の意見を表明することができるよう、児童の意見表明支援に関する専門的知識・技術を有する支援者(以下、「子どもアドボケイト」という。)を利用する機会を提供しなければならない。

第34条の7の2 

第1項 都道府県は、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業又は意見表明等支援事業を行うことができる。

第2項 国及び都道府県以外の者は、内閣府令の定めるところにより、あらかじめ、内閣府令で定める事項を都道府県知事に届け出て、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業又は意見表明等支援事業を行うことができる。

第3項 (略) 都道府県知事への届け出た事項の変更
第4項 (略) 事業の廃止または休止
第5項 (略) 個人情報の保護

第34条の7の3 (略) 「都道府県知事は事業者に報告を求めることなどができる。」

第34条の7の4  (略) 「都道府県知事は、事業者に事業の制限又は停止を命づることができる。」

都道府県自らが意見表明等支援事業を行い、その職員が事業を担うと、他の職員に対する斟酌や遠慮から、子どもの表明した意見や意向の表明を控えたり、無視することが起こります。そのようなことでは、子どもの意見表明の支援という目的に反し、またアドボケイトの独立性も損ねます。
そこでそのようなことが生じないよう、「意見表明等支援事業」については、都道府県自らが事業を行うことなく、その職務の遂行について利害関係を有さない者のうちから、都道府県知事⼜は児童相談所設置自治体の長が委嘱することを原則とするべきであり、その旨を次のように、法律に明記すべきです。

都道府県又は児童相談所設置自治体が意見表明等支援事業を行うときは、都道府県知事又は児童相談所設置自治体の⾧は、内閣府令の定めるところにより事業を行う意見表明等支援事業者に委嘱してこれをおこなうことを原則とする。

児童福祉法等の一部を改正する法律 第5条 

社会福祉法の改正

第2条第3項第2号中「又は子育て援助活動支援事業」を、子育て援助活動支援事業、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業、意見表明等支援事業、妊産婦等生活援助事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業又は親子関係形成支援事業」に、「又は児童家庭支援センター」を「、児童家庭支援センター又は里親支援センター」に改める。

 

改正法の附則 

施行期日について

第1条 この法律は、令和6年4月1日から施行する。ただし、…(以下 略)
第2項 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の児童福祉法及び母子保健法(以下この項において「改正後の両法律」という。)の施行の状況等を勘案し、必要があると認めるときは、改正後の両法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講づるものとする。