「児童福祉法等の一部を改正する法律」により改正された児童福祉法、社会福祉法の条文への質問事項

児童福祉法等の一部を改正する法律」第2条により改正された児童福祉法

第6条の3第17項(追加)

この法律で、意見表明等支援事業とは、第三十三条の三の三に規定する意見聴取等措置の対象となる児童の同条各号に規定する措置を行うことに係る意見又は意向及び第二十七条第一項第三号の措置その他の措置が採られている児童その他の者の当該措置における処遇に係る意見又は意向について、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握するとともに、これらの意見又は意向を勘案して児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整その他の必要な支援を行う事業をいう。

意見表明等支援事業の目的

Q:意見表明等支援事業の目的は何か?
A:
Q:条文には、①児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、②意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握し、③連絡調整その他の必要な支援を行う、と書いてある。支援を受けるのは子どもか、それとも児童相談所、都道府県その他の関係機関か?
A:子ども
Q:なぜ子どもの支援が目的であることが条文上明記されていないのか?
A:
Q:子どもの権利条約の12条第1項には「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。」と書かれている。また第2項には「このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。」と書かれている。意見表明等支援事業と子ども権利条約12条との関係は?
A:子どもの権利条約の締約国としての義務を履行するため。
Q:そうであれば、そのことを条文に、すなわち子どもの意見表明権を保障するための意見表明等支援事業であることを明記するべきではないか。少なくとも、子どものための意見表明等支援事業であることを誤解が生じないよう明記するべきではないか。

児童の福祉に関し知識又は経験を有する者

Q:具体的には誰が該当するか。
A:
Q:子どもの意見や意向を聴取することは、そのような知識や経験がありさえすれば誰でもできるのか?
A:
Q:どのような専門性が必要か。
A:
Q:子どもの意見や意向を聴取するために必要な専門性について、都道府県によってばらばらにならないよう、国が統一基準やガイドラインを示す必要があるのではないか。
A:
Q:厚生労働省の子ども・子育て支援推進調査研究事業の令和元年度の報告書に「アドボケイト制度の構築に関する調査研究」があるが、これを活用する考えはないか。
A:
Q:これまで子どもアドボケイトについて研究や実践を積み重ねてこられた方々が多数おられる。新たに国の統一基準やガイドラインの作成する場合は、こうした方々の研究成果や実戦の経験、ノウハウを生かすべきではないか。
A:
Q:改正案の施行は令和6年4月1日とされており、都道府県では、早急に準備を始める必要がある。いつごろまでに、アドボケイトについての国の統一基準やガイドラインを作成する予定か。
A:
Q:アドボケイトの国家資格についてはどう考えているか。
A:

「意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握」

Q:条文では、子どもの意見又は意向を、「聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握する」と書かれている。聴取と適切な方法とは、どちらが原則か。
A:
Q:聴取しない場合とはどんな場合か。
A:
Q:その場合に、子どもの意見又は意向を把握する方法としてどのような方法が適切か。
A:
Q:子どもから聴取しない場合、子どもの意見や意向ではないものを「子どもの意見や意向」と把握することもあり得る。どのようにして歯止めをかけるのか。

これらの意見又は意向を勘案して」ー子ども基本法案の子ども施策の基本理念に関連して

Q:条文には「勘案して」とあるが、これはどういう意味か。意見の尊重と同じか、違うか。なぜ意見の尊重と書いてないのか。
A:
Q:子どもの権利条約12条1項には、表明された「児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。」と書かれている。また2019年の国連子どもの権利委員会において日本は「委員会は、締約国に対し、・・意見を形成することのできるいかなる子どもに対しても、年齢制限を設けることなく、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する権利を保障し、かつ、子どもの意見が正当に重視されることを確保するよう、促す。」にとの勧告を受けた(平野裕二氏による訳)。
また今国会において立憲民主党が提出した子ども総合基本法案及び与党が提出した子ども基本法案の審議が行われているが、いずれの法案においても、こども施策の基本理念として子どもには自分に関係するすべての事項について意見を表明する機会が確保され、子どもが表明した意見が尊重されることが明記されている(立憲民主党子ども総合基本法案では第3条第3項に、与党が提出した子ども基本法案では第3条の3号と4号)。
子ども基本法案は今国会で成立の見込みが高いが、そうだとすれば、日本国のすべての立法、行政は、基本法案に明記された原則にのっとり行われなければならず、児童福祉法も例外ではない。
子どもが表明した意見は「勘案」ではなく「尊重」されなければならないと考えるが、いかがか?

「児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整」

Q:「連絡調整」とはそれぞれ、具体的には、どのような行為をいうか?
A:
Q:子どもが意見や意向を表明するには、信頼関係があることが前提となる。児童相談所や都道府県への「連絡」は、信頼関係の破壊であり、子どもの信頼に対する裏切りであり、また子どもへの守秘義務違反にあたると考える。「連絡」は子どもの意向に反する場合は行うべきではないと考えるが、どうか。
A:
Q:どのような場合に「連絡」が許容され、あるいは義務とされるか。
A:
Q:児童相談所や都道府県との「調整」も、子どもの意向に反する場合は、子どもの信頼に対する裏切りと考えるが、どうか。

Q:以上より、本条文のうち、後半の児童の「意見又は意向について、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握するとともに、これらの意見又は意向を勘案して、児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整その他の必要な支援を行う事業をいう。」は児童の「意見又は意向の形成及び児童相談所、都道府県その他の関係機関への表明を、児童の意見表明支援に関する専門的知識・技術を有する者が、独立した第三者として支援する事業をいう。」とすべきと考えるが、どうか。

第11条第1項(「都道府県は、この法律の施行に関し、次に掲げる業務を行わなければならない。」)の第2号リ(追加)

児童養護施設その他の施設への入所の措置、一時保護の措置その他の措置の実施及びこれらの措置の実施中における処遇に対する児童の意見又は意向に関し、都道府県児童福祉審議会その他の機関の調査審議及び意見の具申が行われるようにすることその他の児童の権利の擁護に係る環境の整備を行うこと。

Q:「その他の児童の権利の擁護に係る環境の整備」として、どのようなものを想定しているか。都道府県が行う子どもアドボケイト事業の充実、アドボケイトの養成や研修などはどうか。
A:
Q:都道府県の義務とする以上、国として必要な予算を付ける必要があると考えるが、どうか。
A:

第33条の3の3(追加)

都道府県知事又は児童相談所⾧は、次に掲げる場合においては、児童の最善の利益 を考慮するとともに、児童の意見又は意向を勘案して措置を行うために、あらかじめ、年齢、発達の状況その他の当該児童の事情に応じ意見聴取その他の措置(以下この条において「意見聴取等措置」という。)をとらなければならない。ただし、児童の生命又は心身の安全を確保するため緊急を要する場合 で、あらかじめ意見聴取等措置をとるいとまがないときは、次に規定する措置を行つた後速やかに意見 聴取等措置をとらなければならない。

Q:先ほどの質問(「これらの意見又は意向を勘案して」ー子ども基本法案の子ども施策の基本理念に関連して)で述べたとおり、子ども施策の基本方針として表明された子どもの意見や意向は尊重されなければならないから、意見聴取等措置を通じて表明された子どもの意見や意向は「勘案して」ではなく「尊重して」と書くべきではないか。
A:
Q:聴取された意見や意向をないがしろにしてはならないことを明らかにするため、この条文の末尾に、「都道府県知事又は児童相談所⾧は、意見聴取等措置により聴取した児童の意見又は意向を、その年齢及び成熟度に従って正当に重視しなければならない。」との規定を追加するべきでではないか。
A:

第33条の6の2(追加)

都道府県は、児童の健全な育成及び措置解除者等の自立に資するため、その区域内において、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業及び意見表明等支援事業が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない。

Q:「意見表明等支援事業が着実に実施されるよう、必要な措置」とは何か?
A:
Q:令和元年(2019年)の児童福祉法改正案の決議にあたり、衆参両院で「子どもが意見を述べることを支援するための制度を構築し、子どもの最善の利益を確保するため、いわゆるアドボケイト制度の導入に向けた検討を早急に行うこと。」との附帯決議が行われた。附帯決議が求めたのはアドボケイト制度そのものの導入であって「意見表明等支援事業が着実に実施されるよう、必要な措置」では足りないと考えるが、どうか?
A:
Q:適切な意見表明支援が伴わなければ子どもの権利擁護の仕組みが有効に機能しないケースも生じ得る。このような意見表明支援の重要性に鑑みれば、早急に子どもアドボカシー制度を全国的に整備するべきで、都道府県等に「意見表明等支援事業が着実に実施されるよう、必要な措置の実施」の努力義務を負わせるだけでは足りず、端的に子どもに意見表明支援の提供を義務付けるべきではないか。

第34条の7の2(追加)

第1項 都道府県は、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業又は意見表明等支援事業を行うことができる。

第2項 国及び都道府県以外の者は、内閣府令の定めるところにより、あらかじめ、内閣府令で定める事項を都道府県知事に届け出て、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業又は意見表明等支援事業を行うことができる。

Q:第1項で「都道府県は、・・・意見表明等支援事業を行うことができる。」とされているが、「できる」とはどういう意味か。都道府県には意見表明等支援事業をする義務はない、してもいいし、しなくてもいいという意味か。
A:
Q:令和元年(2019年)の児童福祉法改正案の附則第7条4号に「政府は、この法律の施行後二年を目途として、児童の保護及び支援に当たって、児童の意見を聴く機会及び児童が自ら意見を述べることができる機会の確保、当該機会における児童を支援する仕組みの構築、児童の権利を擁護する仕組みの構築その他の児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるための措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と書かれていた。また改正案の決議にあたって、衆参両院で「子どもが意見を述べることを支援するための制度を構築し、子どもの最善の利益を確保するため、いわゆるアドボケイト制度の導入に向けた検討を早急に行うこと。」との附帯決議が行われた。
附則及び附帯決議を受けて、まず「子どもの権利に関するワーキングチーム」で審議が行われ続いて「社会保障審議会(児童部会社会的養育専門委員会)」で検討が行われ、「社会保障審議会(児童部会社会的養育専門委員会)」の報告書では「子どもは一人では意見・意向を形成し表明することに困難を抱えることも多いと考えられることから、意見・意向表明支援(アドボケイト)が行われる体制の整備を都道府県等の努力義務にする。」とした。
しかし予算の乏しい民間に任せるだけでは意見・意向表明支援(アドボケイト)が行われる体制の整備は進まない。よって、「社会保障審議会(児童部会社会的養育専門委員会)」の報告書は、都道府県が自ら意見・意向表明支援(アドボケイト)を行うことも努力義務としたとするべきである。
にもかかわらず、なぜ改正案では都道府県の努力義務とせず、「できる」、すなわち、してもいいし、しなくてもいいとしたのか。
A:
Q:仮に都道府県が意見表明等支援事業を行う場合、勝手にやるのだから国から予算はつけない考えか。
A:
Q:社会保障審議会(児童部会社会的養育専門委員会)の報告書は、都道府県が意見表明等支援事業を行う場合、意見・意向表明支援については、一定の独立性を担保する必要があるので、外部に委託することを基本とすべきとの意見があった、と付記している。都道府県(児童相談所)と子どもの間には利害の対立がありえる。したがって子どもの意見表明の支援にあたる「意見表明等支援事業」には、都道府県(児童相談所)に斟酌しない独立性が不可欠で、都道府県が意見表明等支援事業を行う場合は、独立性があり専門性のある民間機関に委嘱して行うことを法律に明記するべきだと考えるがどうか。
A:
Q:第2項で「国及び都道府県以外の者は、内閣府令の定めるところにより、・・・意見表明等支援事業を行うことができる。」とされている。意見表明等支援事業を国の事業として行う以上、イギリスのように、国が全国的な基準を示すべきと考えるが、条文の定めは、その基準を内閣府令で定める趣旨か?
A:

児童福祉法等の一部を改正する法律」第5条により改正された社会福祉法

改正案第5条の第1文
第2条第3項第2号(第2種社会福祉事業の定義規定)中「又は子育て援助活動支援事業」を「、子育て援助活動支援事業、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業、意見表明等支援事業、妊産婦等生活援助事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業又は親子関係形成支援事業」に、「又は児童家庭支援センター」を「、児童家庭支援センター又は里親支援センター」に改める。

第2条第3項第2号(追加修正)

二 児童福祉法に規定する障害児通所支援事業、障害児相談支援事業、児童自立生活援助事業、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、小規模住居型児童養育事業、小規模保育事業、病児保育事業、子育て援助活動支援事業、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業、意見表明等支援事業、妊産婦等生活援助事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業又は親子関係形成支援事業、同法に規定する助産施設、保育所、児童厚生施設、児童家庭支援センター又は里親支援センターを経営する事業及び児童の福祉の増進について相談に応ずる事業

Q:児童福祉法の改正と合わせて社会福祉法を改正して意見表明等支援事業を第2種社会福祉事業とするとのことだが、民間事業者が事業を行うためにはそれなりの費用がかかる。十分な予算を計上する考えはあるか。
A:
Q:民間事業者が国や都道府県が予算を支出することで、意見表明等支援事業を行う者が、国や都道府県に斟酌して子どもの意見表明を控えるとなれば子どもの意見表明権を保障するための事業ではなくなってしまう。そのようなことがないように、意見表明等支援事業者が財政的にも国や都道府県から独立の立場を維持できるための工夫が必要だと考えるが、どうか。
A: